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座談会「研究を支援する環境と学会活動」について

学会活動が、自分の研究を高める

デンソーアイティーラボラトリ(以下、ITラボ)には、大学とも、大企業の研究所とも違う、比較的自由な研究環境があります。そして、ITラボは、学会への参加や論文発表を推奨しています。ITラボで働く研究者の皆さんに、学会活動の魅力について伺いました。

Member

  • 安倍 満
    研究開発グループ
    シニアリサーチャ
    博士課程修了後、実用化に繋がる研究ができると考え入社。専門は画像認識。現在は、消費電力量が少ないコンピュータでも実装できる画像認識モデルの開発を目指して、計算量の少ないアルゴリズムの開発に取り組んでいる。
  • 内海 慶
    研究開発グループ
    リサーチャ
    修士号取得後に入社した会社で自然言語処理技術の研究に取り組んだ後、自身の研究に注力できる環境を求めて入社。現在は、自然言語処理の教師なし学習の研究に注力している。自動車に限らず、様々な機器が人間の呼びかけに自然に応える環境を目指している。
  • 大林 真人
    研究開発グループ
    リサーチャ
    博士課程修了後、公的研究機関にて3年間研究員として勤務。その後ITラボに入社。専門は制御工学。最近は特に「実時間最適制御」の研究に注力している。自動車の安全運転支援システムへの研究成果の応用を進めている。

自身の研究に打ち込める場を求めて

― まず、お三方の入社の経緯と入社理由をお聞かせください。

安倍私は、実用化に繋がる研究に取り組みたいと思っていたので、博士課程修了後は就職すると決めていました。博士課程の頃はITS(Intelligent Transportation Systems:高度道路交通システム)の研究をしていました。都内で自動車関係の企業内研究所はないかと探していたところ、知人がITラボを教えてくれたんですよ。調べてみると、自動車関係で、実用化に繋がるような画像認識の研究にも取り組んでいることが分かり、その点に魅力に感じました。

また、学生時代に小さなベンチャー企業で働いた経験もあるため、小さなチームの面白さを知っていました。このこともITラボを魅力あるところに感じた一つの要因です。

大林私は、大学を卒業してから1年間のポスドクを経た後、東京都の公設試験研究機関で3年間の任期付き研究員をして、任期終了後、ITラボに入社しました。前職ではセンサーネットワークにおける通信のスケジューリングに関する研究に従事していましたが、もっと実用化に繋がる研究開発に携わりたいと考えたんです。現在は、ITラボで最適制御を研究分野として扱っています。

内海私の場合、ITラボの入社前は、新卒で入った会社で自然言語処理の研究をしていました。しかし、ある組織変更のタイミングで、思うような研究活動ができない状況になってしまったので転職を決意しました。

そこで、自分のやりたい研究が一番できそうだと思えたのがITラボでした。多くの企業内研究所とは異なり、ITラボでは研究テーマも自身で設定できますし、自分がやりたい研究に打ち込める環境があります。基礎研究ができるという点も大きいですね。企業の研究所で基礎研究をさせてくれるところはあまりありませんので。

学会の目的は、自身の研究に磨きをかけるため

― 皆さん学会活動にも積極的に取り組まれているとのことですが。

大林はい。社外での各種発表に加えて、学会(自動車技術会)の専門委員会の活動もしています。この専門委員会というのは、学会で扱うテーマの中でも細分化したテーマについて発表したり、討論したりする場ですね。

そこでは、研究分野に関する現在の動向について話し合います。また、最先端の技術分野について、外部から講師を招いてプレゼンテーションや説明をしてもらい、先端技術についての知識を吸収する機会を作ることもあります。積極的に参加すると、自然と人脈も広がっていくんですよ。それに、学会で論文発表すると、色々なフィードバックが得られます。ITラボの制御チームは少人数なので、研究開発を進める上で、多様な視点からのアドバイスはとても貴重だと思います。

内海そうそう。人工知能学会でプログラム編成委員を大林さんから引き継いだのですが、事務的な作業も多くて大変でした(笑)。

安倍私は、主に国内の研究会や画像認識関係のシンポジウムなどで発表をしていますね。それに加えて、招待講演を依頼されたり、国際会議で論文発表することもあります。かつては、電子情報通信学会のPRMU(Pattern Recognition and Media Understanding:パターン認識・メディア理解)研究会の専門委員、幹事を2年間務めていたこともあるんですよ。それがきっかけで共同研究を行うなど、実際に仕事の幅も広がっています。

論文に限らず、学会活動、そしてITラボで公開している技術ブログなど、社会に情報を発信していくことで、製品化に向けて提案する機会も増えますし、広い意味で社会貢献にも繋がると思っています。

― 学会に参加する企業は多いのですか?

内海元々自然言語処理はビジネスに繋がりやすいので、企業からの参加者が比較的多いようです。最近は、長い歴史がある企業に代わって新興企業からの参加者が増えたと思います。

安倍内海さんと同じで、10年前と現在では、参加者の所属している企業の顔ぶれは随分変わりましたね。

大林そうですね。ただ、企業の学会参加はありますが、情報収集の聴講が多くて発表は少ないですね。確かに、企業としては製品化まで研究内容は機密扱いなので、発表するのは難しい。このため、企業の研究者には残念に感じられている方が多い印象はあります。自社の技術の価値を高めるために学会発表を推奨しているITラボは、企業としては稀有な存在なんじゃないでしょうか。

学会の運営活動も、研究者としての責務

安倍学会の運営に携わるのはボランティアです。学会に参加して論文を発表して、研究者として成長したいと考えているのなら、学会の運営を担当することも、研究者として果たすべき責任ではないかと思います。私は論文の査読や編集も担当していましたが、運営で忙しかった時期は、業務時間の2割ほどの時間を割いていました。

内海そうですよね。論文を投稿する時は、査読をはじめ、多くの人のお世話になっていますから。学会に参加するのなら、私自身も運営を担当して恩を返さなければならないと思います。そういう循環がないと、学会が成立しないので。そして、こういう活動も快くやらせてくれる環境はありがたいと思っています。


ITラボは研究者に何を求めているのか?

― ITラボでは、皆さんにどんなことを期待されていると思いますか?

安倍デンソー本社では、製品化にあたって、様々な技術的課題に直面します。例えば「この画像認識技術をこういうハードウェアで動かしたいけど、処理速度が追い付かない」などといった具体的な課題です。

それを解決するためには、先端の技術を把握し、それをノウハウとして提案できるレベルにしなければなりません。そのために、日々研究に取り組み、論文発表や聴講を通して最新技術に触れて、自分の技術として蓄積することが求められているのではないかと考えています。

大林私は、こちらから「新たな技術を新製品に利用できるのではないか」といったシーズ型の提案をすることが多いですね。課題の解決に向けた研究だけではなく、私たちにはニーズとシーズの両面からの研究が求められていると思っています。

― 大学とITラボの研究環境の違いはどんなところにあるのでしょうか?

大林大学での研究の場合、しばしば論文の数を稼ぐことや、提案書を書くことが最優先になってしまい、技術を深く追求することが疎かになることがあるんです。ITラボではそういうことがないので、自分が納得した研究に打ち込めます。ただし、自分がやりたい研究がデンソーのニーズに合致している必要はあると思いますが。そういう条件が合えば、ITラボは良い環境だと思います。

内海大学では、論文をたくさん書くなど、研究に必要な費用を得るための活動が必要になると思います。でも、ITラボでは、そこまでしなくてもある程度の研究資金を確保できます。その点も大きな違いではないかと思いますね。

研究者としてのやりがい

― では最後に、研究者としてのやりがいを、どこでどのように感じていらっしゃるか、お聞かせください。

大林ITラボでは、最先端の技術を次々と試せるだけでなく、何よりもエンジニアリング(設計、生産)に直結した環境で研究ができます。企業の具体的な製品に非常に近いところで、自分の研究を応用することができるわけです。最先端の技術を使って結果を出し、それを外部に発信するというところに、企業で研究者として働くやりがいを感じます。

内海私は「作れない」「実装が難しくてできない」というものを、新しい知識を利用して実現することがやりがいですね。研究者を続ける最大の動機になっています。

安倍私の思う醍醐味は、研究の実用化に取り組む人たちと深く協力しながら、緊密な関係のもとで仕事ができること。それに、大学などの先端研究成果と、その成果を技術移管して実用化を目指す企業とを繋げて、製品という形にする役割を担えることです。

私の場合、デンソーグループの方向感を理解した上で「将来こういうことがきっと課題になるだろう」と予測しながら研究を進めて、それを論文や学会などで発表しています。そこからグループ内で製品化に向けたプロジェクトが動き出すわけですが、それだけではありません。発表をきっかけに大学との交流が生まれて共同研究を進めたりすることもあるんですね。

企業の実用化への考え方やプロジェクトの進め方は、教育や先端研究を担う大学とでは異なる点が非常に多いんです。でも、その両者の視点を持ちながら、未来を見据えた研究を実用化に落とし込んでいくということに、私は何よりも面白さを感じているんですよ。

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