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研究開発グループ シニアリサーチャ
信号処理

鈴木 幸一郎

Koichiro Suzuki

PROFILE

2002年入社
SI ウェブプログラマ

新技術を素早く世に出していける協力関係

鈴木さんは、信号処理の分野を研究、開発するエンジニアにして、独自のバンドでベーシストとしても活躍するマルチプレイヤー。家庭では共働きの妻と家事を分担する良き夫という側面も持っています。そんな鈴木さんにデンソーアイティーラボラトリ(以下、ITラボ)の魅力や働き方について伺いました。

目に留まったデンソーの文字

大学院時代の研究はデータベースの表現についてでした。実は、データベースの理論的な美しさと実際の使いやすさには開きがあって、理論的な制約をどう緩和したら使いやすくなるかを探ることが大切なんです。誰もが使いやすいデータベースを作ろうと研究に打ち込んでいました。

卒業後はその経験が役立てられそうだと考え、大手SIerに就職しました。ところが研究をしていた頃に比べると、どうしてもただ与えられた仕事をこなすだけの毎日が自分には合わず、いつも物足りなさを感じていました。1年勤めた後に選んだ仕事はWEBプログラマー。プログラムを書くこと自体は好きだったんです。当時はあらゆるプログラム言語に精通したいと考えていて、参考書を読み漁ったり、業務外でもプログラミングに勤しんでいました。やりがいのある日々でしたが、1年ほどで会社が傾いてしまい、退職せざるを得なくなりました。そのままプログラマーを続ける道も考えたのですが、せっかく転職するならもっとクリエイティブな仕事がしたいという思いが沸々と湧いてきて研究の道を志すようになりました。

そうしてインターネット検索で職を探し始めたところ、目に留まったのが「デンソーアイティーラボラトリ」の文字。地元が岐阜ということもあり、デンソーは馴染みのある企業でしたし、その中でも研究のみを担う子会社が独立しているという独自性に惹かれましたね。

応用が広がるミリ波レーダーの研究

ITラボに所属してからは、専らレーダーにまつわる様々な研究をしています。私が研究を始めた2000年代は車載レーダーの製品化が始まった黎明期でしたが、今ではほとんど全ての車種に搭載されるまでになりました。自動運転の確立には欠かせないセンサーの一つですし、今後もさらなる発展が求められています。

中でも車両周囲の状況を検知する走行環境認識センサーとして利用されつつある、ミリ波レーダーの活用は私が現在取り組んでいるテーマの一つです。従来、ミリ波レーダーでは観測対象の位置・相対速度を検出していましたが、利用可能な周波数帯の拡大による距離分解能の向上や、素子の多重化や信号処理方式改良による方位分解能の拡大により、形や大きさまで判別できる可能性が出てきました。また、従来の検出処理では使っていなかったレーダー信号特徴から、検出対象がどんな物体なのか、例えば歩行者なのか車両なのかを判別することも可能になりつつあります。そうなると、歩行者検知は画像センサーだけではなく、レーダーを用いることも可能となり、異なるセンサーの組み合わせによってより遠方から、より悪い状況下、例えば濃霧、雪等の悪天候下でも検出可能になるはずです。

デンソーとITラボ

こうした自動車に関わるテーマは、デンソーから直接私に依頼されることが多いのですが、決して強制されるものではありません。もちろん自らテーマを選ぶこともあります。特にデンソーの先進安全の部署とは入社当初から10数年来の信頼関係を築いてきたということもありますが、元々デンソーの研究・開発部門では手に負えない難題や、将来的に役に立ちそうではあるけれど、まだ海の物とも山の物とも知れないテーマを検証するのがITラボの役割です。いわば研究を専門で請け負う相談役といったところでしょうか。

ですので、一方的に無理難題を押し付けられたり、白を黒にしろ、といった不可能な依頼をされることはありません。たとえ望ましい結果が出なくても、デバイスの性能に限界があるだとか、統計的に限界がある、といった確たる理由さえ導ければ相手もエンジニアなので納得してくれます。話が通じる人たちと仕事ができているのは恵まれていると思います。

我々は研究成果を出し、デンソーは製品化を実現する。それぞれの役割で全力を尽くすことで、新技術を素早く世に出していける協力関係が築けているんです。例えば、年に1度ITラボの研究者全員でデンソー本社に行き、日頃の研究成果の発表や展示を行っています。そこでは、様々な部署や多様なテーマを扱う担当者と直接接点を持てるので、市場のニーズや最新のデバイスを知る良いきっかけになります。また、エンジニアとすぐに議論もでき、そこから新しい研究が生まれることもあります。

こういった交流をはじめ、定期的なプロジェクトのミーティング以外にも、デンソーとはかなり密接にやり取りをしています。

研究の筋を見極めることも大切

研究者として、若い頃から研究をいったんクローズするという筋を見立てる力を持てていたわけではありません。入社したての頃は依頼をもらえることが嬉しくて、過度に期待に応えようとし過ぎていました。何とかデンソー側が求める成果を出そうと、細かな変数や値を汲み上げながら、結果として答えの出ない計算ばかりしてしまうこともよくありました。当然、成果を報告するまでの期限もありますから、さらに焦りも加わってきます。そうするうちに、ドツボにはまってしまうという経験を何度もしました。

そうした失敗を積み重ねたおかげか、段々と筋の悪い研究の見極めができるようになっていきました。現在の技術的な限界だとか、理論的な限界を意識しながら考えて、期限に間に合うように研究を収束させていく習慣が身に付きました。一つのテーマにどっぷりと浸かるのもいいですが、区切りを付けて次の研究へと進めることができるのはプラスだと感じています。後々になってもう一度挑戦した時にうまくいくこともありますし。

互いに刺激し合える仲間たち

研究で行き詰まった時には、よく同僚の言葉に助けられます。オフィスには自席がありますが、基本オープンスペースでの交流が盛んなんです。至る所に自由に使えるホワイトボードがあり、私もよく利用しています。場所を変えるとひらめきが生まれることもありますから。ホワイトボードに数式を書いていたら、興味深そうに同僚が声をかけてくれて、そのまま議論に発展するなんてことも日常茶飯事です。皆、時系列解析や画像処理など研究分野が異なるので、それぞれ違った視点から意見を出し合うことができるんです。まるで雑談のように、ざっくばらんに議論ができる環境はありがたいですね。

派手さはいらない

研究で大切なのは、原理原則に従って一つ一つ地道に解き明かしていくことです。最初から派手な成果はいらない。一つ一つの数式を解いて、現象を解き明かした先にこそ、未来を担う技術やデバイスが生まれると信じています。もっとも、数式を解き明かしていくことが楽しいという個人的な感情も多分に含まれていますが(笑)。

一研究者としては5年先10年先に役立つ、今ないものを作って世の中を良くしたいという思いもあります。私の研究は突き詰めていけば状態推定なわけで、その対象は何も「クルマがどこにいるか」である必要はありません。それがドライバーの感情であったり、ドライバーが何を考えているかでもいいんです。そうした状態をクルマが検知できるようにできれば、眠そうな顔をパシャッと写真で撮ってドライバーに見せ、休憩を促したりとか、運転を楽しんでキビキビ走りたい時にはエギゾーストノートが甲高く聞こえるようにしたりとか、感情や場面に応じて、クルマがもっとドライバーの意図を汲み取ってくれるようになるはずです。クルマで移動する時間をもっと楽しくしていきたいですね。

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