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研究開発グループ マルチリサーチャ
画像認識

吉田 悠一

Yuichi Yoshida

PROFILE

2007年入社
通信大手 ユーザインタフェースの研究

研究から企画、開発、営業まで何でもこなすマルチリサーチャ

「sonson」のハンドルネームで知られる吉田悠一さんは、デンソーアイティーラボラトリ(以下、ITラボ)で画像検索の研究を進める傍ら、様々な学会やカンファレンスで登壇したり、ハッカソンに参加したり、趣味で累計100万ダウンロードを超える人気のiOSアプリを開発したり、自他共に認める「神出鬼没」な研究者です。そんな吉田さんが考える会社の魅力、研究開発の楽しさ、そして仕事と家庭の両立について話を伺いました。

研究は「面白いものを作りたい」思いを実現するプロセス

― 吉田さんは現在どんな研究をしていますか?

「ITラボに入社してからはずっと画像検索とユーザインタフェースに関わる技術の研究開発をしています。研究の過程でコミックスの画像を一度に10万枚検索できる画像検索エンジンを作ったこともありました」

― 画像検索に興味を持ったのはいつからですか?

「社会人になって、しばらくしてからです。社会人になりたての頃はヒューマンインターフェースやユーザーインターフェース(UI)の研究をしていました。画像処理は前職から多少触れていました。より深く画像の研究を始めたきっかけは、ここに入社して、画像の専門家と仕事をするようになったからだと思います。同時に、入社した頃に手に入れたiPhoneで色々なことができるのが面白くて、それで遊びながら、画像認識とユーザインタフェースの両方の研究を進めていました。その中で、作ったサービスが製品化されたこともあります」

―  どんなサービスですか?

「カーナビに目的地を転送するiOSアプリです。iPhoneとカーナビをBluetooth で繋ぎ、iPhone上の地図を動かすとナビ画面に表示された地図も連携して動くというものです。今でこそあまり珍しくもないですが、これを開発したのは2008年頃ですから……」

― 随分早いタイミングですね。

「まだApple社がAPIを一般に開放する前ですね。いずれAPIは開放されるだろうと当たりを付けて開発を進めていました。ヨーロッパのメーカーからも興味を持ってもらい、プレゼンにも行きました。その後、2011年のトヨタのカーナビに採用されることが決まり、本格的に開発がスタートし、車載機能はデンソー本社の技術者が、アプリのベースの部分は僕が作りました」

― そうした、まだ世にない新しい機能や技術はどのようにして思い付くものなのでしょうか?

「新しい機能や技術が出た時、それにずっと触れているうち、何となく思い付くというのが多いかもしれません。触りながら色々動かしながら『こんな動きはできるかな? じゃあ、こういう動きと組み合わせたらどうだろう』といった発想が生まれてきて、それらを試しているうちに自然と思い付くことが多いように感じます」

― 先ほどの、iPhoneとカーナビの画面連携も同様ですか?

「あれは、iPhone の画面に表示させた地図とPC上の画面の地図とを一緒に動かせるというネタアプリを作ったのが最初でした。会社の端っこにノートPCを置き、そこから社内で一番遠い場所に立ってiPhoneでノートPCに表示された地図を動かすという遊びをやったりしていました。その時はこの技術が何の役に立つのか全く想像も付かなかったのですが、周囲からは『いやいや面白いじゃないか』『カーナビに応用したらどうだろう』という声が上がったので『じゃあ、ちょっとデンソーに見せてみるか』という流れになり、そこからトントン拍子に開発が進んでいきました」

― なるほど、日常の中に研究の種が自然と存在しているものなのですね。

「意識して『研究しよう!』と思ってはいないですね。『何か面白いものを作りたい』という思いが先にあって、必要だからエッセンスを調べるし、論文も読むし、実験もします。僕の場合、研究以外に企画も営業も何でもやります」

― すごいですね。そこまでお一人でなさる研究者はあまり聞いたことがないです。

「そこまで難しいことではないと思います。僕は自分の開発したアプリケーションへの問い合わせに対応し、一人で営業に行ったこともあります。一度やっておくと、後で必ず役に立つスキルなので、研究者や技術者のような専門家もできれば自分で一度やってみると面白いと思います。自分がやりたくないプロダクトの営業や企画をやらされるのは、そういった人には向いていないと思いますが」

―  研究者や技術者の方は、人とのコミュニケーションが苦手という勝手な思い込みがあるのですが。

「『苦手だから』とコミュニケーションを絶ってしまったら、理解してもらえなくなってしまいますよね。そのハンデを背負ってしまうのはもったいないなと僕は思っています。それが得意な人と一緒に仕事するとか、色々なやり方があると考えています」

趣味で開発したiPhoneアプリは累計100万ダウンロード

― 吉田さんはご自身で個人的にiPhoneアプリを作られているそうですが、どのようなものですか?

「いくつかありますが、代表的なのは2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)のブラウザアプリです。かれこれ10年くらいずっと作っていて、通算100万ダウンロードを超えています。その昔、某企業から『売ってほしい』と言われたこともあります。売りませんでしたけど」

― そのアプリの開発は、全くプライベートでやっているのですか?

「はい、完全に趣味でやっています」

― 開発にはどれくらいの期間かかりましたか?

「相当かかっていますね。それこそ開発し始めた27~28歳頃は、帰宅したらずっとこれにかかりきりでした。フルスクラッチでコードを4回くらい書き直しています」

― 実際のアプリは表示も早く、見やすいですね。

「ありがとうございます。初期の頃はアプリ自体が使えるメモリが少なかったので、いかに少ないメモリで計算し、早く表示させるかという工夫をずっと考えていました。今は使えるメモリも多いですが、当時はなかなか大変でした」

― 思い付いたアイデアをこうやって実現できるのはいいですね。うらやましいです。

「趣味と勉強を兼ねた仕事といいますか。まぁ、何があっても食いっぱぐれる心配はないかなと思っています(笑)」

2児の父、休日は子どもたちと博物館めぐり

― 1日のスケジュールを教えてください。

「朝は7時半頃に起きて、子どもたちと一緒に朝ごはんを食べます。9時頃に家を出て、会社で仕事。夜は8時半前後に家に着くように会社を出たいんですが、妻から『子どもの寝かしつけと重なるので時間をずらしてほしい』と言われているので、そこは調整しています。帰宅後は食事→入浴→ゲーム→プログラミング→就寝の流れが大体のルーティンです」

― お子さんはおいくつですか?

「小学校2年と幼稚園の年長、二人とも男児です」

― 賑やかそうですね。お子さんとはどんなふうに遊んでいますか?

「最近は一緒にゲームをすることが多くなってきました。子どもたちとはマインクラフトを一緒にやっています。長男はNintendo Switch、次男は僕のお古のiPad、僕は今メインで使っているiPadでそれぞれログインして遊んでいます」

― お子さんからすると、お父さんと一緒に遊べるのが楽しそうですね。

「どうでしょうね。でも、僕としてはマインクラフトに関しては徒労感の方が大きいです。頑張って夜中に掘った鉄や金やダイヤモンドが全く分からない物に姿を変えたり、頑張って作った家が破壊されたり、畑を作ろうと思っていた場所に謎の塔が立っていたりするので(笑)」

― お気持ちお察しします(笑)。お子さんとは外で遊ぶこともありますか?

「もちろんです。休日になると妻が作ってくれた弁当を持って、僕が子どもたちを外に連れ出すことが多いです。公園で遊ぶこともあれば、博物館に連れて行くこともあります。私はインドア派で、子どもたちも割と博物館に行くのが好きなので、都内近郊の博物館は大体行ったと思います」

― お子さんも吉田さんに似て、プログラミングに興味を持っているのでは?

「似ている部分もありますが、長男はどちらかというと自然科学派ですね。虫や植物、今は人体の仕組みに興味を持っています。次男は……まだよく分かりません(笑)」

僕が作ったもので人を面白くする嬉しさ

― 吉田さんにとってITラボとはどんな会社ですか?

「良くも悪くも自由な会社だと思います。僕はその環境をフルに利用して成果も出せたと思っているので、個人的にはすごく満足しています。ただ、人の指示がないと動けないという人や、強いリーダーシップを持つ人の下でないと働けない人には合わないかもしれません」

― 皆さんそうおっしゃいますよね。独立した研究者が向いていると。

「ただ、独立して研究ができるとなると、ある程度、年齢と経験を重ねた人に限定されてしまうのが難点かなと思います。僕は若い研究者にもどんどん入ってきてもらいたいと考えています。やりたいことや意欲があれば、必ずしも独立した研究者である必要はないと思います」

― 若い研究者の中には、皆さんの中に入って働くことに気後れする人もいるのでは?

「そんなことを考えなくても大丈夫ですよ。ただ、今はまだ若い研究者が成長できる環境が整っていない部分もあるので、今後は若い研究者の成長のため、チームで研究を進める機会やメンター制度を充実させたり、色々な施策を打っているところです」

― なるほど。それでは最後になりますが、吉田さんが仕事をしていて一番楽しいのはどんな時ですか?

「作ったものが動いて、それを見た人が『面白いね』『製品化した方がいいよ』というジャッジをしてくれた時ですかね。僕の作ったもので誰かが満足してくれるのが一番嬉しいです」

― 誰かの満足が自分の満足に繋がるということでしょうか?

「そうですね。そうじゃなければ僕らの研究している意味がないと思っています」

― ありがとうございます。これからも面白いものをたくさん作ってください。

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